社内の休憩時間に

私の職場のお茶休憩は、その時ばかりは各自が自由気ままな時間を過ごせるようになっている社員の和みの時間です。
私はというと、持参したウーロン茶のティーパックをポットのお湯で濃く淹れて一息つくというのが休憩時間の日課になっています。
自分の席につき温かいウーロン茶をすすりながら同僚たちになんとはなく目をやると、最近入社したあの人がやはり持参したお茶のティーパックを手にお茶を淹れているのが目に入りました。
林田学という男です。
入社したてということもあってか休憩時間にも人との交流はあまりなく、おとなしく人目につかないようにお茶を淹れてはそそくさと自席に戻りすすっているのを見て、この人はどういう人なんだろうと何とはなしに気になってきました。
しかしそんなことに気をかけていられないほど忙しい1週間を終え、ある日いつものようにお茶を淹れようとポットに近づいた瞬間、同じくポットに向かってきた林田学とあやうくぶつかりそうになりました。
向こうは戸惑いながらごめんなさいと言い、こちらも平気ですと答えながらふと見上げてみると、彼は屈託のない顔を見せて微笑んでいるのです。
その朗らかな表情に、私はなんだかとても安心感を覚えてしまいました。
林田学って意外とお茶目なのかな、次の休憩時間にはいつも何のお茶を飲んでいるのか話しかけてみようかなと、ふとそんな気持ちになってきました。